
ロレアル、OpenAIと戦略提携 美容AIの「基盤パートナー」に
ロレアルが2026年6月17日、VivaTech 2026(パリ)でOpenAIとの戦略提携を発表した。消費者向け体験と社内業務の両方にAIを組み込む内容で、ロレアルはOpenAIを自社の「Transformative AI」ロードマップにおける「基盤パートナー」と位置づけている。
提携の内容
提携は大きく2つの領域で構成される。
1つ目は消費者体験の強化だ。傘下ブランドのメイベリン ニューヨークが、自社のAR技術「ModiFace」を使ったバーチャルメイク試着機能をChatGPT上に直接統合する。日本でも人気のリップシリーズ「SPステイ マットインク」を展開するメイベリン ニューヨークが、まさにこの統合の主役だ。米国では、ランコムやケラスターゼの製品がChatGPT内でより見つけやすくなるよう、製品データの連携を強化する。またスキンシューティカルズ・CeraVe・ガルニエの3ブランドは、OpenAIが展開するChatGPT広告のグローバルパイロットに参加する。
2つ目は研究・社内業務の強化だ。OpenAIが開発した生命科学領域向けの推論モデル「GPT-Rosalind」を使い、肌のマイクロバイオーム(皮膚常在菌叢)の解析を進める。第一弾として、ラ ロッシュ ポゼの製品開発に活用される。あわせて、ロレアル社内の生成AIコンテンツ基盤「CreAItech」にもOpenAIの最新モデルが組み込まれ、画像・動画コンテンツの制作に使われる。
CreAItechは2024年に立ち上げられた、ロレアルが自社構築したコンテンツ制作プラットフォームで、特定の1社の技術に依存する仕組みではない。Google、Adobe、NVIDIA、Seedance、OMIなど複数の企業のAIモデルを組み合わせて画像・動画・音声・3Dコンテンツの生成に活用しており、Adobeの生成AIツール「Adobe Firefly」もこの中の一つとして採用されている。今回の提携により、この構成にOpenAIの最新モデルが新たに加わる形になる。
ロレアルとは
ロレアルは1909年、フランス人化学者ウジェーヌ・シュエレールがパリで創業した。本社はフランス・クリシー。「Because you're worth it/あなたにはその価値があるから」のキャッチコピーとともに、CMで見覚えのある人も多いだろう。世界約150カ国で事業を展開し、ランコム、イヴ・サンローラン、ロレアル パリ、メイベリン ニューヨーク、キールズ、ラ ロッシュ ポゼ、CeraVe、ガルニエなど約36のブランドを傘下に持つ、世界最大の化粧品会社である。2025年12月期の売上高は440.5億ユーロ。
株式市場では、ロレアルはパリ証券取引所の主要指数CAC40の構成銘柄で、2026年には時価総額でLVMHに次ぐフランス国内2位につけている。
なお、ドラッグストアで日焼け止めやスキンケアの定番として知られるラ ロッシュ ポゼも、このロレアルグループの傘下ブランドの一つだ。
日本におけるロレアル
ロレアルは1963年、小林コーセーとの提携を通じて日本での事業を開始した。1996年に日本法人「日本ロレアル株式会社」を設立し、現在は東京都新宿区に本社を置く。日本市場はロレアルグループにとって世界第3位の市場規模を持つ。
神奈川県川崎市(かながわサイエンスパーク内)には、フランス以外で初めてとなる全研究段階(基礎・応用・開発・評価)を備えた「日本ロレアル リサーチ&イノベーションセンター」を置く。製造拠点は静岡県御殿場市にあり、グループの高級ブランドを製造する工場(株式会社コスメロール)を運営している。日本発のグローバルブランドである「シュウ ウエムラ」と「タカミ」は、ブランド本部を日本国内に置いている。
同時期の業界の動き
同時期に、美容小売企業セフォラ(LVMH傘下)も2026年にChatGPT統合を発表している(詳細は別記事)。ロレアルはLVMHの傘下企業ではなく、ベッテンクール・マイヤーズ家とネスレを主要株主とする独立した上場企業である。資本関係のない別々の企業が、それぞれ独自にOpenAIとの取り組みを進めている点には留意したい。
まとめ
ロレアルとOpenAIの提携は、メイベリン ニューヨークのバーチャル試着やChatGPT広告パイロットといった消費者向けの取り組みから、GPT-Rosalindによるマイクロバイオーム研究、CreAItechへのモデル統合といった研究・社内業務まで、幅広い範囲にまたがる。日本ロレアルは1963年の事業開始以来、川崎の研究開発拠点や御殿場の製造拠点を持つなど、グループ内でも一定の存在感を持つ市場だ。今回の提携が日本でどのように展開されるかに注目したい。
情報源:
- L'Oréal and OpenAI join forces for Transformation in Beauty with AI(ロレアル Finance、2026年6月17日)
- ロレアル公式プレスリリース(2026年6月17日)
- LSA Conso(2026年6月17日)
- Luxury Tribune(2026年6月18日)
- 日本ロレアル株式会社プレスリリース(PR TIMES、2023年12月19日)
- L'Oréal's CreAItech(L'Oréal公式サイト)
- CREAITECH: How Adobe Firefly helps L'Oréal accelerate content creation(Adobe Business Blog)
- 日本ロレアルの研究開発(Research & Innovation)の取り組み(L'Oréal公式サイト)
- L'Oréal - 2024 universal registration document(L'Oréal Finance、株主構成)
観察日:2026-07-20|Commerce × AI Observatory
