
フランスのエージェント型AI購買、消費者は不信、小売は決済まで届かず
フランスで同じ週に発表された2つの調査が、AIエージェントによる購買がフランスで足踏みしている実態を、消費者側と小売側の両面から浮き彫りにした。決済代行大手Checkout.comの調査では、消費者がAIへの購入委任に根強い不信を抱いていることが示され、コンサルティング会社Converteoの調査では、小売側のAIアシスタントの多くがそもそも決済まで対応できていないことが分かった。
消費者側、委任への根強い不信
Checkout.comが実施した「Commerce agentique 2026」調査によると、AIによる購入代行を任せられる組織が「一つもない」と答えたフランスの消費者は41%に上り、世界平均(27%)を14ポイント上回った。今後もAIに購入を委任するつもりはないと明言した消費者も、世界の他地域に比べて目立って多かったという。
それでも購入への関心自体がないわけではなく、条件次第では受け入れる余地も示されている。消費者が挙げた主な条件は、1回あたりの購入上限を設定できること、権限をいつでも取り消せること、返金・キャンセル手続きが簡単であることの3点で、追加の確認なしにAIが使ってよいと考える金額は平均180ユーロだったという。価格面でより有利な条件があれば、AIによるブランドの乗り換えを許可するという回答も一定数見られた。
小売側も、決済まで到達できていない
Converteoがフランスの主要小売業者170社を対象に行った調査では、対話型のAIアシスタントを導入している企業はまだ少数派にとどまり、導入済みのアシスタントの性能にもばらつきが大きいことが分かった。機能面でも、商品ページへ誘導するだけにとどまるものが多く、カートへの追加や購入の完了まで対応できるアシスタントは限られているという。
消費者側の懸念としては、個人データの安全性やAIの推薦内容の中立性を挙げる声が多く、なぜその商品を勧めるのか理由を説明できないアシスタントも少なくなかった。Converteoのローラン・ニコラ=ゲノック氏は、フランスの企業はすでに最初の一歩を踏み出した段階だとした上で、「取引の自律性と消費者からの信頼を勝ち取るという跳躍こそが、年内に乗り越えるべき本当の課題として残っている」と指摘している。
2つの調査を重ねると、フランスのエージェント型AI購買は、消費者側の「委任への不信」と、小売側の「決済まで届かない実装」という、需要と供給の両面での課題を同時に抱えていることが見えてくる。小売業者の9割近くがAIエージェントの拡大に備えて準備を進めていると回答している一方、実際にAIエージェント経由の取引が占める割合は現状わずか数%にとどまっており、両者のギャップが埋まるまでにはまだ時間がかかりそうだ。
情報源:
- Commerce agentique : les Français prêts à tester l'IA(E-commerce Nation、2026年9月7日)
- E-commerce : pourquoi l'IA ne permet pas encore de finaliser les achats(E-commerce Mag、2026年9月7日)
- Rapport Commerce Agentique 2026(Checkout.com公式)
観察日:2026-09-08|Commerce × AI Observatory
