
「AI上司」の取り組みが日本企業で進む NECは全員AIの部署を新設、ドコモビジネスは管理職の考えを反映した「AI上司」を200超導入
日本企業で、AIを「上司」の役割に据える取り組みが進んでいる。NECは2026年8月1日付で、部門長から社員までをAIエージェントが担う「コーポレートAI・Workforce部門」を新設した。一方、NTTドコモビジネスは、管理職の判断基準や業務知識を反映したAIが社員の相談に応じる「AI上司」を、社内の全37組織に200超導入したと日本経済新聞が報じている。同じ「AI上司」でも、NECはAI同士で上司と部下の関係をつくり、ドコモビジネスは人間の管理職の考え方を反映したAIが部下の相談に応じる、という違いがある。
NEC:部門長から社員まで全員AIの部署
NECは2026年8月10日、同年8月1日付で「コーポレートAI・Workforce部門」を新設したと発表した。AI部門長、AI組織の状況を経営視点から評価するAIボード(CxO機能)、AIマネージャー、AI社員の4階層で構成され、NECは国内の大手企業で初めての取り組みとしている。同社は、役員会議で示す経営分析・シミュレーション・リスク予兆検知を対象領域として挙げている。最終的な評価・意思決定や、品質・ガバナンスの統制は人が担い、人の役割は、AIが働きやすい環境の整備や、意思決定・変革の実行といったAIには担えない領域へ移るという。
デイリー新潮によれば、部門は立ち上げ時に17体のAIエージェントで始まり、現在は30体に増えている。部門長のAIには「AI全体統(ぜんたいおさむ)」という名前が付けられている。NECの広報担当者は、統括(部門長)、監視・ガバナンス(AIボード)、AI社員の管理・タスク配分(AIマネージャー)、業務遂行(AI社員)という役割の異なる階層で構成することで、単なる業務の自動化ではなく「組織」としての自律的な運営を成立させていると説明している。AIボードの会議では、各領域を代表する担当者がAI社員から上がってきた課題を話し合い、人間の社員へのサポートを依頼することもあるという。@ITによれば、週次のサーベイで全AI社員から業務上の課題や改善提案を集め、AIボードで審議・決議する仕組みもある。
同部門はコーポレート分野(法務や経営企画、経理など)の一組織という位置付けで、広報担当者は、経営分析に加え、顧客課題の分析や提案支援、サービスデスク、ウェブサイトの更新を含む情報発信業務などへの適用可能性があるとしている。同記事によれば、AI社員に給与は支払われず、稼働に応じた利用料が発生するという。
ドコモビジネス:管理職の考えを反映した「AI上司」を200超導入
日本経済新聞によれば、NTTドコモビジネスは2025年10月に「AI上司」の展開を始め、約1年間で社内の全37組織に200超を導入した。部長や課長、組織長らの判断基準や業務知識を反映し、会議の議事録や資料などを基に回答するもので、本人の口調に寄せた受け答えもできる。部下は上司本人に相談する前にAI上司と「壁打ち」し、資料の抜け漏れや不足する観点を洗い出せる。各組織が米マイクロソフトの生成AIサービスを使って作成し、簡易なものであれば1時間程度、資料の追加などの調整を含めても数時間で作れるという。
同社の西塚要デジタル改革推進部長は、「経験豊富な管理職が持つ資料チェックの観点など『いい上司』のベストプラクティスを蓄積できる」と説明している。同紙は、国内企業では経営トップや幹部の考えを反映した「AI役員」を導入する動きが広がっており、キリンホールディングスは経営幹部が参加する会議で「AI役員」が論点を提示し、三井住友フィナンシャルグループは「AI-CEO」が従業員のキャリア相談に応じていると伝えている。ドコモビジネスのように、役員にとどまらず部長や課長にまで対象を広げて全社で導入するのは珍しいという。同社は、このシステムの外部販売も視野に入れている。
AI社長「AIコジー」と、社内AI活用の広がり
ドコモビジネスは、AI上司のほかに、小島克重社長の経営判断の背景などを反映したAI社長「AIコジー」も導入している。2025年に幹部約70人で実証し、2026年7月に全社員約1万人へ公開した。経営方針の確認や顧客提案、営業戦略の相談などに使われているという。全社公開にあたっては、幹部会議の議事録に含まれる顧客名や契約金額などの機微情報をAIで除き、加工後の文章を別のAIで再確認する。さらに、処理済みの情報の1割を人がランダムに抽出して安全性を確認している。
日本経済新聞によれば、同社の社内のAIエージェントは2026年9月末時点で約2万8000件に上る。社内システムなどに関する問い合わせを受けるヘルプデスクでは案件の8割をAIで解決し、営業現場では営業活動量が2倍以上になった。2030年度に2024年度比で30%の生産性向上を目指している。今後は、ベテラン社員が経験を通じて身につけた判断の観点などの「暗黙知」もAIが参照できる形で蓄積する方針で、2027年度には、現在の業務や結果が過去のどの判断に基づくかをAIで追跡できる仕組みの整備を目指す。
情報源:
- NEC、AIネイティブカンパニーへの変革に向け、大手企業で初めて、人と共創するAI自律型組織を新設(NEC、2026年8月10日)
- 「AI同士に上司・部下の関係まで存在」 NECの無人部署とは? 「会議を行うのもAI」(デイリー新潮、Yahoo!ニュース、2026年10月5日)
- NECが新設した「AIオンリー組織」、仕事はどう回る? 部門長もマネジャーも社員もAI(@IT、2026年9月10日)
- もう「AI上司」で十分? ドコモビジネスで200超導入、部長も課長も(日本経済新聞、2026年10月7日)
- 社長の考えをいつでも聞ける!AIコジーを社内公開(NTT docomo Business Engineers' Blog)
観察日:2026-10-07|Commerce × AI Observatory
