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Google対OpenAI、米小売のAIアシスタント争奪戦 陣営化が進む

Google対OpenAI、米小売のAIアシスタント争奪戦 陣営化が進む

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2026年に入り、米国の主要小売企業が相次いでAIショッピングアシスタントを導入している。その多くがGoogleの「Gemini Enterprise for Customer Experience」を基盤にする一方、一部はOpenAIと組む道を選んでいる。手芸・クラフト小売のMichaelsによる新アシスタント「Ask Mike」の発表をきっかけに、この構図を時系列で整理する。

Michaelsの「Ask Mike」

Michaelsは2026年7月21日、Google CloudのGemini Enterprise for Customer Experienceを基盤にしたAIショッピングアシスタント「Ask Mike」を正式発表した。5月にソフトローンチしており、開発はコンセプトから本番稼働まで6週間だったという。子供の誕生日パーティーの計画やDIYカーテン用の生地探しといった、会話形式のリクエストに対応する。数週間で約75,000件の会話が発生し、そのうち27%が商品クリックまたはカートへの追加につながったと、Michaelsは発表している。今後は商品ページでのAI生成概要や、文脈連動プロンプトの追加も計画しているという。

Michaelsは全米49州とカナダに1,300店舗以上を展開する、米国最大級の手芸・クラフト小売である。競合だったParty CityとJoannが相次いで店舗を閉鎖・撤退したことを受け、その市場シェアの取り込みを進めている最中でもある。

Google陣営の広がり:Macy's・Ulta Beauty・Home Depot・Kohl's

Michaelsが使うGemini Enterprise for Customer Experienceは、2026年に入って複数の大手小売が相次いで採用している基盤だ。

先陣を切ったのは百貨店のMacy'sだった。2025年12月にパイロット導入し、2026年3月に正式展開した「Ask Macy's」は、250万点以上のSKUを扱うカタログに対応する会話型アシスタントだ。Google Cloudによれば、Macy's社内は元々約6か月かけて独自のAIエージェントを開発していたが、Gemini Enterprise for Customer Experienceの提供開始を受けてその開発を中断し、方針を転換。両社のエンジニアがチームを組み、4週間で本番稼働にこぎつけたという。ベータ版は公開から24時間でサイト訪問者の50%に、1週間後には100%に展開範囲を拡大した。Google Cloudの発表によれば、ベータテスト期間中、Ask Macy'sを利用した顧客の訪問あたり売上は、利用しなかった顧客と比べて4.75倍高かったという。ただしこの数字には注意が必要で、PYMNTSの報道によれば、Ask Macy'sを使う顧客はもともと購入意欲の高い層に偏る傾向があり、この4.75倍という数字はカゴ落ち率そのものが下がったことを示すものではないという。

続いて2026年4月、美容小売のUlta Beautyも参入した。自社サイト・アプリ向けにGemini Enterprise for Customer Experienceを基盤にした「Ulta AI」を導入し、4,600万人超のロイヤルティ会員データを活用した提案を行う。あわせて、Google検索のAI ModeやGeminiアプリ上でもUlta Beautyの商品を購入できる「エージェント型コマース」機能も発表しており、こちらはGoogleがShopifyと共同開発した規格「Universal Commerce Protocol(UCP)」を使っている。

住宅リフォーム用品を扱うHome Depotも、Google Cloudとの提携を拡大している。2026年1月、既存のAIアシスタント「Magic Apron」を、単純な検索補助ツールから、DIY利用者・プロ双方向けの会話型アシスタントへと大幅に強化した。あわせて、配送時に大型トラックが通行しづらい道路や搬入経路をGoogle マップの画像から予測する配送リスク予測機能も導入している。

2026年7月29日には、百貨店Kohl'sも新学期商戦に合わせてGemini基盤のAIアシスタントを立ち上げた。ローンチ直後のため、まだ効果を示すデータは公表されていない。

対抗するOpenAI陣営:Home DepotとLowe's、分岐点は2025年3月

一方、住宅リフォーム分野でHome Depotのライバルにあたる Lowe'sは、Googleではなく OpenAIと組む道を選んでいる。実はこの分岐は今回の一連の動きより前、2025年3月にまでさかのぼる。Home DepotがMagic Apronの初期版を立ち上げたのとほぼ同じタイミングで、Lowe'sはOpenAIと共同開発した会話型アドバイザー「Mylow」を発表していた。同年5月には、店舗スタッフ向けのAIアシスタント「Mylow Companion」も導入している。OpenAIの最高執行責任者(COO)ブラッド・ライトキャップ氏は、Lowe'sとの協業について、スタッフが顧客のプロジェクトに必要なものを見つける手助けをAIが担っていると説明している。

つまり、同じ住宅リフォーム業界の2社が、2025年3月というほぼ同じ時期に、それぞれ異なるAI企業を選んでいたことになる。2026年に入ってGoogle陣営が一気に拡大した結果、この分岐がより鮮明になった形だ。

GoogleとOpenAI、アプローチの違い

ここまで見てきた「自社サイト上のAIアシスタント」という切り口で見ると、両社のアプローチには違いがある。GoogleのGemini Enterprise for Customer Experienceは、複数の小売に横展開できるパッケージ製品として提供されており、Macy's・Ulta Beauty・Michaels・Home Depot・Kohl'sのほか、Kroger、Woolworths(オーストラリア)など、業種を問わず幅広い小売が同じ基盤を採用している。一方、Lowe'sの「Mylow」はOpenAIとの個別の共同開発によるもので、パッケージ化された製品ラインというよりは、企業ごとの専用開発に近い形をとっている。

これとは別に、「チャット上で買い物を完結させる」ための決済・チェックアウトの規格でも、両社は異なる路線を進めている。OpenAIがStripeと共同開発した「Agentic Commerce Protocol(ACP)」は、2025年9月に始動し、ChatGPT内で決済まで完結させる「Instant Checkout」機能を支えている。対象はチェックアウトの場面に絞られており、小売側は商品データをOpenAIに渡し、決済はStripeが担う、比較的シンプルな仕組みだ。一方、GoogleがShopifyと共同開発した「Universal Commerce Protocol(UCP)」は、2026年1月のNRFで発表され、商品発見から購入後のサポートまで、買い物体験全体を対象にするより範囲の広い規格となっている。

整理すると、両社の取り組みには2つの異なるレイヤーがある。1つは、今回見てきたMacy's・Ulta Beauty・Michaels・Home Depot・Kohl'sのような「小売の自社サイト・アプリに組み込まれるアシスタント」。もう1つは、ChatGPTやGoogle検索・Geminiアプリといった「AI企業側のプラットフォーム上で買い物が完結する仕組み」だ。前者ではGoogleのGemini Enterprise for Customer Experienceが複数の小売に横展開されている一方、OpenAI側はLowe'sのような個別の共同開発にとどまっている。後者では、OpenAIのACPがChatGPT内蔵型で先行し、Googleは後発のUCPで発見から購入後まで、より広い範囲をカバーしようとしている。どちらのレイヤーでも、GoogleとOpenAIがそれぞれ異なる形で存在感を示している構図だ。

まとめ

Michaelsの「Ask Mike」は、単独のニュースというより、2025年から続くGoogleとOpenAIの陣営争いの最新の一手として位置づけられる。現時点ではGemini Enterprise for Customer Experienceを採用する小売の方が、Macy's・Ulta Beauty・Home Depot・Michaels・Kohl'sと数の上で優勢だ。ただし効果を示す数字の多くは各社の自己発表によるものであり、Macy'sの「4.75倍」のように、比較条件に注意が必要なものも含まれる。今後、他の小売がどちらの陣営を選ぶか、あるいは両方を併用するかは、引き続き注視する価値がある。

情報源:

観察日:2026-08-04|Commerce × AI Observatory