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Amazon対Perplexity、AIエージェントのアクセス権をめぐる訴訟 控訴審が差止命令を取り消し

Amazon対Perplexity、AIエージェントのアクセス権をめぐる訴訟 控訴審が差止命令を取り消し

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米連邦第9巡回区控訴裁判所は2026年8月4日、AmazonがPerplexityの「Comet」ブラウザに対して勝ち取っていた仮差止命令を全員一致で取り消した。AIエージェントがユーザーに代わってウェブサイトにアクセスし、買い物を代行する行為が法律上どう扱われるかを問う、米国で初めての本格的な司法判断だ。

Perplexityとは

Perplexityは2022年8月、OpenAI・Google・Metaの元研究者らによって創業されたAIスタートアップだ。CEOのアラヴィンド・スリニヴァス氏をはじめ、複数の大手AI企業出身者が名を連ねる。主力製品は、検索エンジンの代わりに、質問に対して出典付きの要約を直接返す「Perplexity」という検索サービスで、自らを「answer engine(答えを返すエンジン)」と位置づけている。2026年には評価額が約200億ドルに達しており、Nvidia、ジェフ・ベゾス氏(Amazon創業者個人)、SoftBankなどから出資を受けている。

Cometとは

Cometは、Perplexityが2025年7月に発表した、Google Chromeと同じ技術基盤(Chromium)を使ったAI搭載ウェブブラウザだ。ブラウザ内にAIアシスタントが組み込まれており、ウェブページの要約や質問応答だけでなく、ユーザーに代わってタブを開いたり、フォームに入力したり、買い物を代行したりする「エージェント型」の操作ができる。当初は月額200ドルの上位プラン加入者限定だったが、2025年10月に世界中で無料化された。

何が起きたか

AmazonとPerplexityは、2024年に一度「エージェント型ショッピングの一時停止」に合意していたとAmazonは主張している。しかし2025年8月、Amazonは自社サイトへの技術的なアクセス遮断を実施。Amazon側の主張によれば、Perplexityはこれに対し、Cometを「通常のChromeブラウザ」であるかのように偽装させ、Amazonへのアクセスを再開させたという。同年11月、Amazonは停止要求(cease-and-desist)の通知書を送付した。

Amazonの主張

Amazonは2025年11月、北カリフォルニア地区連邦地裁にPerplexityを提訴した。主な主張は、Cometがユーザーの保存済みログイン情報を使ってAmazonアカウントに入り、注文履歴やチェックアウトを含むパスワード保護領域にアクセスしている、という点だ。Amazonは、たとえユーザー自身がAIエージェントにこの操作を許可していたとしても、Amazon自身がその形でのアクセスを許可していない以上、米連邦法「CFAA(コンピュータ詐欺濫用防止法)」およびカリフォルニア州法「CDAFA(包括的コンピュータデータアクセス詐欺法)」上の不正アクセスにあたる、と主張した。あわせて、Amazonのページの見た目をPerplexityの画面内に表示させることについて、商標権侵害・不正競争にあたるとの主張も行っている。

Perplexityの主張

Perplexityは、Amazonの主張を「いじめ(bullying)」だと反論した。Cometはユーザー自身の指示に基づいて操作しているだけであり、Amazonの本当の狙いは広告収入の保護にあるとの見方を示している。控訴審の書面では、AmazonのCFAA上の主張を「AIエージェントには根本的に当てはまらない理論だ」と述べていた。

裁判の経緯

2026年3月10日、マキシン・チェズニー判事(サンフランシスコ)はAmazon側の主張を認め、仮差止命令を発令した。Cometがパスワード保護領域(アカウントページ・注文履歴・チェックアウトなど)にアクセスすることを禁止し、すでに収集していたデータの破棄も命じている。Perplexityは翌日ただちに控訴し、1週間ほどで第9巡回区控訴裁判所がこの差止命令の効力を一時停止した。

2026年6月11日、シアトルで口頭弁論が行われた。エリック・タン判事は「ユーザーが鍵をPerplexityに渡し、Perplexityがその鍵でAmazonのサーバーに入っているのではないか」といった趣旨の質問を投げかけるなど、1986年に制定されたCFAAを現代のAIエージェントにどう当てはめるかが争点となった。

2026年8月4日、控訴審は3名の裁判官全員一致で、地裁の差止命令を取り消した。判断の要点は、「Amazonのコンピュータにアクセスしているのはユーザー自身であって、Perplexityではない」というものだ。CFAA上の請求が成立するには、Perplexityが意図的に保護されたコンピュータに不正アクセスし、そこから情報を取得し、1年間で5,000ドル以上の損害を生じさせたことを示す必要があるが、Amazonは現時点でこれを示せていない、と判断された。控訴審はまた、「この判断は現時点の記録に基づく限定的なものであり、エージェント型AI全般や他の法的文脈における責任について、広い法原則を定めるものではない」とも明言している。事件は地裁に差し戻され、審理が続く見通しだ。

今後の注目ポイント

いくつか、この先の展開を左右しそうな点がある。1つ目は、事件が地裁に差し戻された後、Amazonがどのような追加の主張・証拠を持ち出すかだ。控訴審は「現時点の記録に基づく限定的な判断」だと明言しており、審理が進む中で判断が変わる余地を残している。2つ目は、Amazon自身の対応だ。Amazonは判決後、「自分たちの主張に自信を持っており、次の対応を検討している」とコメントしており、上訴や新たな法的手段を取る可能性がある。3つ目は、この判断が他のウェブサイト・ECサイトにどう波及するかだ。控訴審は今回の判断がエージェント型AI全般に広く適用される法原則ではないと述べているが、ログインを必要とする他の小売・予約サイトにとっても、AIエージェントを「訪問者」としてどう扱うべきかという同じ論点に直面することになる。ACP・UCPのような、AI企業と小売側が合意の上で構築する購買プロトコルとは異なり、今回の対立は、小売側の同意なしにAIエージェントがアクセスしてくる場合の扱いを問うものであり、この観点からも今後の司法判断の蓄積が注目される。

情報源:

観察日:2026-08-10|Commerce × AI Observatory