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Amazon、希少書籍を裁断してAI学習に 求められたのは人間が書く文章

Amazon、希少書籍を裁断してAI学習に 求められたのは人間が書く文章

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AIモデルの性能がここまで高まった2026年になっても、AI企業が欲しがっているのは、結局のところ人間が自分の手で書いた文章だった。404 MediaとTechCrunchの調査報道により、Amazonが希少・絶版書籍を大量に購入し、背表紙を裁断してスキャンした上でAIモデルの学習データとして取り込み、書籍の現物は処分している実態が明らかになった。書籍にエアタグを仕込んで追跡したところ、荷物はラスベガスのAmazon施設にたどり着いたという。

エアタグがたどり着いた書籍処理場

404 Mediaは、古書マーケットプレイスBiblioを通じて約1,000冊分の大口注文を受けていたある古書販売業者に協力を仰ぎ、出荷される荷物にエアタグを忍ばせて配送先を追跡した。荷物はカリフォルニアからウィスコンシン、コロラドを経由し、最終的にラスベガスにあるAmazonの拠点「LAS8」に到着した。書籍の裁断・スキャンを専門に行うのは、このLAS8内にある「VGT3」というチームだという。エンブレムには、本をくわえたティラノサウルスが描かれているという。

同施設では、スキャンを効率化するために書籍の背表紙が裁断され、ページごとにスキャンされた後、現物は処分される。持ち込まれた書籍が無傷のまま戻ってくることはないという。スキャンされたデータは、Amazonの生成AIモデルの学習データとして取り込まれる。一部の報道では、Amazon自身の基盤モデル群「Nova」の学習に使われているとされているが、これはAmazonが直接認めたものではない。

Amazonはこの件について、「顧客向けの商品・サービスを開発・改善するため、商業チャネルを通じて書籍を購入している」とコメントしている。スキャン後に書籍を処分している点については触れていない。

AIが必要とするのは、人間が書いた文章

ここで狙われているのが、主に2022年以前に出版された書籍である点が興味深い。AIが生成した文章がインターネット上に大量に出回る前の、人間の手による文章だからだ。AIが生成した文章を学習データとして取り込み続けると、AI自身の性能が劣化していく「モデル崩壊」と呼ばれる現象が起きるとされ、これを避けるために、AI以前の時代に書かれた文章の価値がかえって高まっている。書店関係者の間では、AI企業側がISBN単位で特定の書籍を狙い撃ちしているとの見方もある。ISBNは書籍の版ごとに割り振られる固有の識別番号で、注文の際にISBNを名指しで指定してくる場合、在庫をまとめて買い取っているというより、まだデジタル化されていない書籍をあらかじめリスト化した上で狙い撃ちで発注している可能性を示す。実際、書誌データベースISBNdbが一時「世界最高のAI学習データが棚に眠っている」という趣旨の宣伝文句を掲げていたことも報じられている。

同様の手法は、Anthropicが2024年から「プロジェクト・パナマ」として先行して行っていたことも、別の裁判資料の開示で今年7月に明らかになっている。想定していた処理規模は、半年間で50万冊から200万冊。最先端のAIをつくる企業が、その学習のために世界中の絶版書籍を集めて回っていたことになる。

皮肉なのは、これほどまでに珍重される人間の文章が、スキャンという形でAIに取り込まれた瞬間、書籍そのものは不要なものとして処分されてしまう点だ。文章を書いた人間の営みには最大級の価値を認めながら、その文章が刻まれた紙の本は、読み終えたら用無し、というわけだ。AIが人間の言葉をどこまで必要とし続けるのか、そしてその代償として何が失われていくのか、書籍という物理的な形をめぐるこの構図には、しばらく注目しておきたい。

情報源:

観察日:2026-08-17|Commerce × AI Observatory