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AI代理購入が引き起こす「アマゾン飛ばし」

AI代理購入が引き起こす「アマゾン飛ばし」

Amazon#エージェンティックコマース#UCP#ACP#アマゾン飛ばし

Amazonを介さずにAIエージェントが商品の比較や購入を完結させる、いわゆる「アマゾン飛ばし」という言葉が囁かれ始めている。

「アマゾン飛ばし」とは、消費者が商品の比較や購入を、Amazonのサイトやアプリを経由せずにAIエージェントとの対話だけで完結させてしまう現象を指す。出品者の商品を目立たせるための広告事業は、利用者がAmazonのページを訪れて検索・閲覧すること自体を前提に成り立っており、AIエージェントが商品発見の入り口を代替してしまえば、この広告収入の土台が揺らぐ。加えて、利用者がどんな言葉で何を探し、何を選んだかという購買行動のデータも、Amazon自身の手を離れてAIエージェント側に蓄積されていくことになり、Amazonの強みである検索・レコメンド機能の精度そのものにも影響しかねない。さらに、ChatGPTやGeminiのようなAIエージェントが、Amazonが長年かけて蓄積してきた膨大な商品カタログの情報を取得して回答に利用しながら、Amazonにプラットフォーム手数料を一切支払わないという「ただ乗り」の構図も、Amazonにとっては見過ごせないリスクだ。

締め出しと標準参加、Amazonの二正面作戦

Amazonは2025年8月21日、OpenAIやAnthropic、Google、Meta、Huaweiなど外部のAIボットをrobots.txt経由で一括して遮断した。2026年2月には、AIエージェントに身元の明示や契約上の要件を課す独自の「Agent Policy」を導入し、外部エージェントによる自社サイトへのアクセスを厳格に管理する姿勢を続けてきた。

ところが同年4月24日、AmazonはMeta・Microsoft・Salesforce・Stripeとともに、Googleが主導する「Universal Commerce Protocol(UCP)」の技術方針を協議する「UCP Tech Council」への参加を発表した。UCPはAIエージェントが複数のプラットフォームをまたいで商品発見から決済までやり取りできるようにする開放標準で、Google・Shopify・Etsy・Target・Wayfairがすでに名を連ねていた。今回の発表資料には、Amazonが自社サイトでUCPを採用するとの言及はなく、あくまで標準の技術的な方向性を協議する諮問機関への参加にとどまる。業界メディアの分析では、これは外部エージェントを締め出す方針の撤回ではなく、独自のAIショッピング機能「Rufus」や、商品を利用シーンに紐づける知識基盤「COSMO」を軸にした自前のエージェント戦略を維持しながら、業界標準の形成には内側から関与しておく、いわば二正面作戦だと指摘されている。

UCPが実際にできること、Amazonの選別的な対応

そもそもUCPが技術的に何をする標準なのかを見ておく必要がある。UCPは、AIエージェントが小売業者とどうやり取りするかを定めた開放標準で、大きく4つの要素からなる。互いに対応可能な機能を確認し合う「ケーパビリティ・ディスカバリー」、決済手段を標準化する仕組み、MCPやA2Aを含む複数の通信方式、そしてカート・決済・注文管理の共通インターフェースだ。この標準に対応してさえいれば、どのAIエージェントも、どのUCP準拠の小売業者とも共通の手順でやり取りできるようになる、というのが狙いだという。

Amazonの参加も、この文脈で見ると単純な締め出しの撤回とは少し違う姿が見えてくる。Amazonは自社のAIショッピング機能「Rufus」、他の小売業者からの購入も代行する「Buy for Me」、自社ブランド向けの「Shop Direct」といった独自のクローズドな仕組みは維持したままだ。UCPへの参加は、あくまで外部のAIエージェントとどう向き合うかという、別の層の話として位置づけられている。つまり自社のAIアシスタントという「壁に囲われた庭」そのものには、UCPは手を付けていない。締め出しか標準参加かという二択ではなく、内側と外側で異なるルールを使い分けている、という方が実態に近そうだ。

過去1年ほど、Amazonのような自前の仕組みを守るプレイヤーと、決済領域の標準であるACPや、より広範に商品発見から決済までをカバーするUCPのような開かれた標準を推すプレイヤーとの間で、商取引の主導権をめぐる綱引きが続いてきた。Amazonが標準化の協議の場に加わったことは、この綱引きに一つの節目をつけたとも言える。

情報源:

観察日:2026-09-01|Commerce × AI Observatory